フルサイズに35mmを付けて友人を撮る。背景も入れつつ顔を大きく写そうと近づき、あとで画像を開くと鼻がぐいっと前に出ている。そんな写りに引っかかったことはないでしょうか。
複数人で撮ったときに、端に立っていた人の顔だけ横へ伸びて見えることもあります。同じ「顔が歪む」でも、近すぎたのか、画面のどこに置いたのか、レンズそのものの写りなのかで、次に動かすものが変わります。
先にレンズの買い替えを結論にする必要はありません。まずは撮影距離、画面内の配置、そしてカメラや現像ソフトの補正が扱う対象。この三つを切り分けるところから。
| 気になった写り | 最初に試すこと |
| 鼻や頬が前に張り出して見える | 安全に下がれるだけ距離を取り、撮り直して写りを見る |
| 画面の端にいる人の顔だけ伸びる | 顔を画面中央寄りに置き直して撮り直す |
| 背景の柱や壁の線が弓なりに曲がる | カメラや現像ソフトの歪曲補正が対象にしている症状か確認する |
この表は原因を言い当てるためのものではなく、どこから手を付けるかの入り口です。以下、三つの見直し方を順番に。
鼻が目立つなら距離を取る
正面に近い向きでは、鼻先はカメラに近く、耳や輪郭はその分だけ奥にあります。撮影距離が短いほど、この近い部分と遠い部分の距離差が全体に占める割合が大きくなり、手前のパーツが相対的に大きく写ります。顔の平均的な寸法を使った投影モデルでも、短い距離で撮るほど鼻幅と顔幅の見かけの比が増えることがWardらの研究で示されています。
焦点距離別の人物作例でも、人物の写る大きさをそろえると広角側ほど撮影距離が短くなり、手前の鼻や頬が目立ちやすくなると説明されています。同じ位置のまま焦点距離だけ変えた比較ではない点に注意してください。効いているのは、レンズの名前より立ち位置のほうです。
だから最初の一手は、下がること。足場と周囲の安全を確かめたうえでいったん距離を取り、撮り直して画面で見比べます。違いが分かりにくければ、下がれる範囲でもう一度。
ここで一つ、順番を間違えないでほしいところがあります。すでに近い位置で撮ってしまった画像を切り取っても、写り込んだ鼻と顔の比率はそのまま。顔が画面に占める割合が変わるだけで、使える画素範囲は減ります。
切り取りは「離れて撮った写真を寄せる」ための操作であって、近すぎた写真を戻す操作ではありません。
壁際やテーブル席で下がれないこともありますよね。その場合は人物に動いてもらうか、撮影場所を変えて距離を作ります。
距離を作れなければ、その場での顔アップは見送る。判断としてはそれで十分だと思っています。
なお、何メートル離れれば安心という万能の数字はありません。「50mmなら歪まない」も同じで、焦点距離そのものが顔の比率を決めているわけではないので、写りを見ながら距離を決めるのが現実的です。

端の顔が伸びたら中央へ
距離は十分に取ったのに、写っている人のうち一人だけ顔が横に伸びている。こうなると、前の章とは別の話です。広角の画面では、端や隅に近い位置ほど、投影の都合で形が伸びたり縮んだりして見える現象がLaiらの研究で扱われています。
この場合に動かすのは立ち位置ではなく、画面内の配置。集合写真の解説にも、広角レンズでは人物をなるべく中心に配置する案内があります。顔を画面の縁ぎりぎりに追いやらず、四隅の周りに余白を残して組み直してみてください。
複数人なら、横並びの幅を少し詰めて全員を中央寄りの帯に収める。全員を中央へ寄せきれないときは二列にするか、安全に距離を作って周囲の余白を確保します。撮影後の切り取りだけでは、写り込んだ顔の伸びそのものは直せません。
そして、近さと端配置は同時に起きます。近い位置から撮って、しかも顔が隅にある。そのときは距離と配置を別々に見直したほうが早い。
中央へ移したからといって、近距離で生まれた鼻と顔の比率まで戻るわけではありません。

直線も曲がるなら補正を確認
三つ目の見分け方は、顔ではなく背景を見ることです。柱、窓枠、床のタイルの目地。そうした直線が弓なりに曲がり、樽型・糸巻き型の歪曲が疑われるなら、補正の対象を確かめます。
カメラ内や現像ソフトの歪曲補正は、この樽型・糸巻き型を軽減するための機能です。ある機種のオンラインマニュアルでも、樽型と糸巻き型を減らす機能として説明されています。機種や現像ソフトによって名称も操作も違うので、手元の環境で「何を対象にした補正か」を確認するところから。
もう一点、補正を強くかけるほど画面の周辺が切り取られる場合があります。端に置いた人物が構図の外へ出ていないか、補正後の画面で見ておくと安心です。
つまり補正は、直線の曲がりに効く手段。顔そのものの比率が気になったなら、やはり撮り直しのほうが近道になります。

35mmで迷いやすい疑問
- 何m離れればよいか、一律に決められますか
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決められません。顔の寸法や向き、どこまで顔を大きく写したいか、下がれる場所かどうかで変わります。数字で覚えるより、安全に取れる範囲で距離を変えて撮り直し、画面で比べて決めるほうが確実です。
- F値を変えれば顔の比率は直せますか
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F値だけを変えても撮影位置は変わりません。ここで扱う顔の各部の見かけの比率は撮影距離との関係なので、鼻が前に出て見える写りには距離と配置の見直しを先に。
- 50mmへの買い替えは必須ですか
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必須ではありません。同じ顔の大きさで写すなら長い焦点距離ほど必要な撮影距離は延びるため、下がる余地のある場所では結果として距離を稼げます。一方、下がれない室内では扱いにくくなるので、背景をどこまで入れたいかと合わせて考えたいところ。
写りを見て一つずつ変える
迷ったときの流れはシンプルです。近い位置から撮った顔が気になったら、まず安全に下がって撮り直す。自分が下がれない場所なら、人物側の位置か撮影場所を変えます。
距離を作れなければ、その場での顔アップは見送る。一度に何もかも動かさず一つずつ変えるほうが、次に何が効いたのか分かります。
もう少し踏み込みたくなったら、次の記事もどうぞ。35mmで背景を残す構図の作り方、焦点距離と立ち位置の基本、APS-Cで部屋が入りきらないときの考え方を、それぞれまとめています。
